2021年12月27日月曜日

令和3年度学会発表報告(その1)

(12月4日(土)にオンラインで開催された人文学部国語国文学会の発表内容(概要)です。)

 新潟大学附属図書館で、坂口安吾論を書く

長沼光彦

 新潟大学附属図書館に所蔵されている資料を用いて、坂口安吾を取り上げた論文を書いた経緯を紹介しました。私が執筆した論文を題材に、学生の皆さんに、身近な図書館を活用する例を知ってもらい、研究調査をする際に参考にしてもらおうと思ったわけです。
 新潟大学人文学部が、1919年設立の旧制新潟高等学校に淵源を持つため、現在の図書館は、戦前の雑誌など貴重な資料を閲覧することができます。旧制新潟高校は、1927年に芥川龍之介が「ポオの一面」の題で講演を行うような、文化の発信地でした。
 また、坂口安吾のような新潟出身の作家が生きた時代を調べるには、図書館に所蔵される郷土資料が役立ちます。坂口安吾は「母を殺した少年」(1936年)で、新潟開港の歴史を語り、「吹雪物語」(1938年)で、満州との航路が開かれた新潟を舞台としました。資料を調べると、坂口安吾の見方が、歴史的事実と一致しない場合があり、さらに、当時の新潟市長の見解と相反する点を発見できました。